
女性には、月経や妊娠・出産により不足しがちな栄養素があります。そのひとつが鉄。ここでは、鉄の働きや不足状態によるリスクのほか、摂取のポイントを解説します。
鉄の役割と不足のリスクは?
鉄はミネラルの一種です。主に赤血球のヘモグロビン、筋肉のミオグロビンの材料となり、酸素を全身に運搬したり、筋肉の代謝をサポートする重要な役割を担っています。そのほか、体の成長、神経発達、細胞機能、ホルモンの合成などにも関係する栄養素です(*1)。
体内で鉄が不足し貧血を引き起こすと、筋力低下や疲労感などが起こる可能性があります(*2)。
■妊娠中の鉄不足のリスク
妊娠中に鉄が不足すると、お腹の中の赤ちゃんへの酸素や栄養素の供給が妨げられます(*3) 。また、妊娠している女性が貧血を引き起こすと、低体重出生児、早産などのリスクが増加するという報告もあるので (*4)、妊娠中は特に、日頃の食事から意識して摂るようにしましょう。
~ちゃんと鉄足りている?~
女性は月経により鉄が損失されやすく、特に月経量の多い人は注意が必要です。また、妊娠中はお腹の中の赤ちゃんの成長のためにお母さんの血液量が増加する関係で、より多くの鉄が必要とされます(*5)。
鉄の推奨量(mg/日)は?
月経のある成人女性(18~64歳)の場合10.0~10.5mg(月経がない場合は6.0mg)の摂取が推奨されています (*6)。一方で、摂取量の平均値は約7mgと十分とは言えません(*7)。
■妊娠中の鉄の推奨量(mg/日)は?
妊娠中は、妊娠初期に+2.5mg、妊娠中・後期に+8.5mg (*8)の付加量が推奨されていますが、妊娠中の女性の平均摂取量は十分とは言えません(*9)。 妊娠後に一生懸命補おうと思っても、これまでの習慣やつわりなどで食事内容を大きく変えることは困難な場合もあるため、妊娠前から意識して摂るようにしましょう。
鉄を多く含む食材や摂取のポイントは?
食品由来の鉄には、肉や魚などの動物性食品に多い「ヘム鉄」、野菜などの植物性食品に多い「非ヘム鉄」があります。非ヘム鉄はヘム鉄と比較し吸収率が低いため、 吸収を促進してくれる動物性タンパク質やビタミンCと一緒に摂るのがおすすめです(*10)。
一方で、全粒穀物や茶などは非ヘム鉄の吸収を妨げるとされています(*11)。
また、レバーは鉄だけでなく、ビタミンAが多く含まれています。ビタミンAは妊娠初期(妊娠3カ月まで)に非常に多く摂ると、赤ちゃんの奇形を発症する懸念があります(*12)。 貧血予防にレバーばかりを多く摂ったり、ビタミンAを含むサプリメントの摂取には気を付けましょう。不安な場合は、医師や管理栄養士などの専門家に相談すると安心です。

参考文献・サイト
*1 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム「鉄 | e-ヘルスネット」(閲覧日2025-11)
厚生労働省 eJIM鉄「サプリメント・ビタミン・ミネラル - 医療者」(閲覧日2025-11)
*2 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム「鉄 | e-ヘルスネット」(閲覧日2025-11)
*3 厚生労働省 「妊娠前からはじめよう 健やかなからだづくりと食生活BOOK」(閲覧日2025-11)
*4*5 厚生労働省 eJIM「鉄[サプリメント・ビタミン・ミネラル - 医療者]」(閲覧日2025-11)
*6 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(閲覧日2025-11)
*7 厚生労働省「令和6年国民健康・栄養調査報告」(閲覧日2026-1)
*8 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(閲覧日2025-11)
*9 厚生労働省「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」(閲覧日2025-11)
厚生労働省 令和6年「国民健康・栄養調査」(閲覧日2026-1)
*10 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム「鉄 | e-ヘルスネット」(閲覧日2025-11)
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所「鉄 - 「 健康食品 」の安全性・有効性情報」(閲覧日2025-11)
*11 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所「鉄 - 「 健康食品 」の安全性・有効性情報」(閲覧日2025-11)
*12 食品安全委員会「お母さんになるあなたと周りの人たちへ」(閲覧日2025-11)

【監修にご協力いただいた専門家】管理栄養士・成島真理(なりしま まり)先生
専門学校卒業後、委託給食会社に就職し、献立作成や調理等栄養士業務に従事。老人ホームや病院での経験を活かし、管理栄養士国家試験合格を機に女性専用フィットネススタジオに転職。
スタジオでのアドバイザー業務を経て、人事部教務課へ異動。新入社員研修や昇級研修を担当する傍ら、スタッフへ運動や栄養の知識向上を目指し、勉強会等を開催。
その後、個人事業主として専門学校の授業やヘルスケア関連企業のサポート、妊産婦やアスリート、ダイエッターの栄養相談等を実施。老若男女、健康な人から病者、妊産婦、アスリートなどそれぞれが取り組みやすいよりよい食事を提案し、健康づくり・パフォーマンス向上など個人の目的達成のために食の面からサポートしている。
また、プレコンセプションケアに関心を持ち、2022年10月より、慶應義塾大学SFC研究所健康情報コンソーシアムに個人会員として参画。




