
卵子凍結とは
将来の妊娠を見据えた卵子凍結への関心が高まっています。卵子凍結とは、妊娠する力が低下する前に卵子を採取し体外へ取り出して凍結・保存し、将来の妊娠に備える手段のひとつです。
これまでは、(がん治療に際しての副作用などによる)生殖機能低下・消失の恐れのある患者を中心に実施されてきましたが、近年、将来自身の卵子を使った妊娠を望んでいるものの何らかの事情で今すぐの妊娠は考えられない状況にある未婚の女性、パートナーのいない女性が、妊娠の希望を残すために卵子凍結の選択をするケースがでてきています。これを社会的卵子凍結(医学的な理由ではない、将来の妊娠に備えるための卵子凍結)といいます。
なぜ卵子凍結を行うの?
一生分の卵母細胞(卵子のもととなる細胞)は胎児期に作られ、その数は妊娠6~7カ月頃に最大約600万~700万個とピークとなります。出生時には100万~200万個、思春期には約30万個まで減少、50歳前後になると数百〜1,000個程度まで減少し、閉経を迎えます。
加えて、卵母細胞は胎児期に形成された後、排卵までの長期間にわたり分裂を停止しており、加齢とともに染色体異常や、細胞質機能の低下が起こりやすくなります。これにより、妊娠率の低下や流産、児の先天性疾患のリスクが高まることが指摘されています。
このような加齢による影響を考慮し、あらかじめ若い頃の卵子を凍結し(40 歳未満が推奨されています)、妊娠を望んだ時に使用すること(45歳未満が推奨されています)を目的として、卵子凍結を行うことがひとつの選択肢となっています。

卵子凍結までの流れ
①病院を探す
社会的卵子凍結を実施している病院を探します。
②事前検査
AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査、ホルモン値検査、経腟超音波検査を行い卵巣の状態などを確認します。
③卵巣刺激
ヒトの場合、通常は1ヶ月に1個の卵子が排卵されますが、卵子凍結や体外受精においては、妊娠確率を高めるために、より多くの卵子を獲得する必要があり、内服薬や注射による排卵誘発剤を投与します。
④採卵
排卵前に卵巣から卵子を取り出します。経腟超音波で卵巣内の卵胞の位置を確認しながら卵巣に細い針を刺し、卵子を回収します。
⑤凍結・保存
回収した卵子は液体窒素内で急速凍結・保存されます。
保存した凍結卵子は、将来パートナーと出会い、妊娠を望んだタイミングで使用することになります。その際は卵子を融解し、顕微鏡下で卵子の中に精子を直接注入する顕微授精を実施します。良好な胚(受精卵)に発育したら、子宮内に移植します。胚が子宮内膜に着床すれば妊娠成立です。

卵子凍結の注意点は?
●からだへの負担
治療により卵巣が過剰に刺激されると、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)などのリスクがあります。OHSSの主な症状は卵巣の腫れ、腹水、胸水などで、稀ではありますが重症化すると腎不全や血栓症などの命に関わる合併症を引き起こし、入院治療が必要になることもあります。また、採卵に際しては卵巣出血や感染症などのリスクもあります。
●妊娠を保証するものではないということ
必ずしも卵子を回収できるとは限りません。また、卵子は凍結・融解によるダメージを受ける可能性があります。
妊娠・出産は卵子の質以外の要因も関係するほか、将来のパートナーに不妊原因がある可能性もあります。卵子凍結は将来の妊娠を目指す上で有効な選択肢ではありますが、妊娠を保証できるものではないことを認識しておきましょう。
田中 佑佳先生の解説
凍結した卵子の融解後の生存率は8割程度です。そこから、精子と顕微授精させて受精卵となり、良好胚まで育つ数となるとさらに少なくなります。確率から考えると、1人の子どもを授かるのに、20代の方でだいたい10~20個、30代の方だと20~30個の凍結卵子が必要です。1回の採卵では目標とする卵子の数が回収できない場合、2~3回採卵を行うこともあります。

卵子凍結にかかる費用
卵子凍結にかかる費用は公的医療保険の適用外で、全額自己負担です。病院の費用設定や採卵数などによって異なりますが、凍結までに数十万円かかることが多いようです。その後も、保管期間を延長するごとに費用がかかります。さらに、凍結卵子を使った妊娠を目指す際には、受精や培養、胚移植に関わる費用の負担があります。
東京都では都内に住む18~39歳を対象に、卵子凍結を実施した年度に最大20万円を支給するなど、自治体によっては助成制度を設けています(※記事掲載時点の内容です)。居住地の自治体のホームページなどで最新情報を確認してみましょう。
また、関連する手術や処置について、加入している民間の医療保険の契約内容によっては、給付対象となる可能性もあります。
\ライフプランをしっかりと/
今すぐに妊娠できない理由は様々ですが、その理由が本当に妊娠を先送りすべき事情であるのかは、それぞれがしっかり向き合うことが大切です。
妊娠はゴールではなく、家族にとって新たなスタートです。高齢妊娠は、妊娠合併症リスクが上昇するほか、介護と育児の負担が同時期に発生するダブルケアラーの問題もあります。
卵子を凍結したからといって妊娠・出産を漠然と先延ばしにするのではなく、しっかりとライフプランを立てることが重要です。


<監修いただいた先生>
田中 佑佳(たなか ゆか)先生
日本産婦人科学会 産婦人科専門医/日本生殖医学会 生殖医療専門医/日本スポーツ協会認定スポーツドクター/日本医師会認定産業医




