
約4.4組に1組の夫婦に不妊検査・治療の経験があると言われています(※1)。また、不妊原因の約半分に男性が関係しているとされています。精子は熱などに弱い繊細な細胞で、日々の些細な行動に精子がダメージを受ける可能性が隠れています。「精子の数が少ない」「動きが悪い」「形態異常の精子が多い」といった問題があると、妊娠しづらくなることがあります。将来子どもを持つことを望んでいる男性は、自身の生活習慣を振り返ってみましょう。
目次
・男性の妊活で気を付けたいことは?
・地道な生活習慣の見直しで精子の改善を
男性の妊活で気を付けたいことは?
■精巣温度が上昇する行動(サウナ、膝上でのパソコン作業など)
精子を生産する精巣がサウナや長時間の入浴といった高温環境にさらされると、精子の数や運動率の低下を招く可能性があります。妊活中は控えるか、時々下半身を冷やすといった対策を講じましょう。
そのほか、膝の上にノートパソコンを置いて作業を行う、ボトムスの前ポケットにスマートフォンを入れた状態にするといった、ついやってしまいがちな行為も精子の質の低下に関連があると言われています。
また、着用する下着は、ブリーフやボクサータイプよりも、妊活中は通気性の良好なトランクスタイプが推奨されています。
<妊活中は発熱も注意>
インフルエンザ、コロナなどに罹患し高熱が続くと、精巣がダメージを受け一時的に精子の数が減少することも。精子の回復まで時間を要することから、体調管理に気を付けましょう。
■喫煙
様々な健康リスクを有する喫煙ですが、妊活にも悪影響を及ぼす可能性があります。喫煙による有害物質が精子形成を阻害するほか、血流が悪くなり勃起不全(ED)を引き起こす可能性があります。電子タバコも注意が必要です。

■禁欲期間が長い(射精頻度が少ない)
妊活中は禁欲期間(前回の射精~次に射精するまでの期間)を長めに設けた方が妊娠しやすいと誤解されがちですが、実際は射精頻度が少ないと精子の質の低下につながります。精巣内での精子の寿命は約1週間と、時間経過に伴い死滅した精子や、DNAの損傷した精子が増えるためです。WHO(世界保健機関)の精液検査ガイドラインによると、検査に際して「2~7日」の禁欲期間が推奨されています。
■肥満
肥満は、精子の質の低下に加え、性機能が衰えるリスクがあります。食生活の見直しや適度な運動に取り組み適正体重(BMI18.5以上25未満)へと戻すことで、これらの改善につながることが期待できます。
■AGA(男性型脱毛症)治療をしている
病院で処方されるAGA治療薬(フィナステリドやデュタステリドなど)の中には、男性ホルモンを抑制する働きを有するものがあり、精子の質や性機能へ悪影響を及ぼす可能性があると言われています。AGA治療を受けている人、検討している人は医師に相談すると安心です。
■サイクリング
自転車のサドルに下半身が長時間圧迫されると、男性器付近の血流が滞り勃起不全(ED)のほか、精子の質が低下するリスクがあります。妊活中はサイクリングを控えるか、時折サドルから腰を浮かす、休息をこまめにとる、柔らかい素材のサドルを使うなどし、下半身の圧迫を緩和すると良いでしょう。
■過度の飲酒
二日酔いするほどの飲酒は、精子の数や運動率の低下に繋がると言われています。適度な飲酒の基準(1日当たり純アルコール20g、ビールなら中瓶1本、※2)を守るようにしましょう。また、週2日ほど「休肝日」を設けることも推奨されています。

地道な生活習慣見直しで精子の改善を
精子は毎日生産され、個人差はあるものの、その数は約1億個にのぼると言われています。精細管の中で精原細胞が細胞分裂を繰り返し、約74日間かけて精子へと成熟します。こうした精子の生産サイクルから、生活習慣を見直してすぐに改善が見られるとは限らず、約2~3カ月後の精子に良い影響が期待されます。焦らずに、地道に取り組むようにしましょう。
※参考1)厚生労働省「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」(参照2025-10)
※参考2)厚生労働省「健康日本21(アルコール)」(参照2025-10)

【監修いただいた先生】井手 久満(いで ひさみつ)先生
順天堂大学大学院医学研究科泌尿器科学創造長寿医学講座特任教授。1991年宮崎大学医学部卒業後、国立がんセンター研究所分子腫瘍学部、カルフォルニア大学ロサンジェルス校ハワードヒューズ研究所、杏林大学泌尿器科、帝京大学医学部泌尿器科学准教授、獨協医科大学埼玉医療センター泌尿器科准教授、同 低侵襲治療センター教授などを経て、2023年より現職。
医学博士、日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本内分泌学会内分泌代謝科(泌尿器科)専門医、日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会腹腔鏡技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医、泌尿器ロボット支援手術プロクター認定医、テストステロン治療認定医、日本メンズヘルス医学会副理事長、日本抗加齢学会 副理事長、日本性機能学会理事、日本内分泌学会理事、ヒト細胞学会評議員等。




